心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

露に濡れた緑の中で楽園の音を聴く。

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空気が甘いですね。


露に濡れた緑の中で彼はそう言った。


霧のような雨が庭園を覆い、

空気はしっとりと濡れていた。


雨上がりの空気は、


たしかに甘い。

 

 

水を含んだ空気は、

お堂の柱も馨らせる。


木の幹独特の、甘い馨り。


三方の壁が開け放たれたお堂は、

その素朴な木の柱の額縁の中に、

美しい、緑の世界を閉じ込めた。


お堂の中にいるのに、緑に包まれたその中で。


わたしたちは、楽園の音を聴く。


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その音は、まるで水の波紋のよう。


音の波が、優しく静かにこちらへ届く。

 

お堂を満たし、緑の世界へ零れてゆく。


水の玉に溶け、


緑の光に溶け、


蝉の声に溶ける。

 

 

まるで自然の中に沁み込むような、やさしい音色。


空気が甘いというのなら、その音もまた甘かった。


ひとつひとつが奏でる音は波紋となって調和して。


やわらかな緑と、にぎやかな蝉の声の中に消える。

 

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先日聴いた音色は、もっと凛としていた。


静かで、真っ直ぐで、ただただ美しかった。


この日の音は柔らかく甘くこの場を包み込む。


 

彼の音は連なる蓮の葉から零れ落ちる水。


静かに、美しく、零れ落ちる一雫の露が、


ひとつの蓮の葉から花から無限に零れる。


昨年聴いた時も、先日聴いた時も、それは一雫

 

けれど、この日は。


その一雫が落ちるその先から、

ふわりと優しく波紋が広がった。

 

 

その波紋が優しくこの場を時間から切り離す。

 

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じわじわとこの空間を満たす蝉の声。


蝉の声を思い出すと、子どもの頃に還る気がする。


暑い夏の日差しと、どこまでも青い空と一面の緑。


まるでどこにいるのかどれだけ時間が経ったのか。


目を閉じ緑をお堂を消して音だけを沁み込ませる。


起きているのか寝ているのか夢か現かそれすらも。


どこか暗闇の向こうに置いてきてしまったようで。

 

 

ただ奏でられる音と蝉の声とお堂に馨る香を聴く。

 

 

すべての現実の事象は消え去り

音と馨りの向こうに自分の心の庭を見る。

 

 

わたしが見る庭はいつもとても静かで美しい。


それが南国の庭でも京都の庭でも異国の少数民族の庭でも。


ただただシンプルで。

水の気配と豊かさと幸福が、

わたしの目の前に広がる庭を満たす。


荒井さんの音の向こうには、

いつも静かで落ち着いた幸福がある。


彼の奏でる音は、

わたしの心のさざ波を、

ゆるやかに消していく。


そして体をほどいてゆく。


ひたすらに心地よい時間に、


ゆらゆらと夢現の中で音に遊ぶ。

 

 

気が付いたら、演奏は終わっていた。

まるでひとときのまぼろしのような。

 

 

時計を見たら、それだけの時間は経っていた。


まるで昼下がりのうたた寝のようなひととき。

 

 

楽園の音に浸ってぼんやりとした頭をかかえて、


ああ、確かに夢のようなひとときが終わったんだな、


静かになって、人の声が戻ってきた空間を不思議に思う。

 

 

変わらず残ったのは、

お堂を満たす蝉の声と木の馨り。


そして、演奏中に炊かれていたお香。


少しぴりりと辛いそれに、

荒井さんの奏でる音の甘さと、

戻ってきた現実を感じたのでした。

 

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本当に素敵な、楽園の時間をありがとうございます。


この日この場所で、音に遊べた時間を幸せに思います。

 

荒井さんの奏でる楽園の音はこちらから。

本当に、まるで世界からふわりと離れるような、

やさしくしあわせでみたされる時間を味わえます。


YASUHITO ARAI

https://www.samadhibowl.com


昨年の記事はこちらから。

自然にたゆたう、自然がつくりだす、音の世界に沈む。

http://letterforyou.hatenadiary.jp/entry/2016/10/04/074922


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