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心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

書が繋ぐご縁。書が拓く未来。繋がるべき者と繋がる不思議。

まるで炎のような。


まるで人のような。

そんな不思議な絵があった。


書道家龍玄さんの個展で出会った「エナジー上昇」。

この書に惹かれて仕方がない、と言ったそのひとは、


この書の中に自分を見る、とそう言った。


いつ来ても、何度見ても、気になるのはこの書だけ。

そのひとの心をまっすぐ射抜く、そのひとだけの書。


こんな風に、上昇していく自分でありたい、と彼は言った。

そして、この書を自分は買うだろう、と。

けれど、それは今じゃない。今日の商談が決まったら。そのお金でこの書を買うよ。数時間後にはまた連絡する。

そう言って、彼はその場所を後にした。


その間に訪れた、ひとりの男。


嫌な予感が書道家の胸を過る。


彼はさらりと個展会場を巡り。


あの書の前で足を止めたのだ。


「これ、いいね」


「これをもらう」


即断即決。男の決断は、早い。



「ちょっと待ってくれないか」


数時間後に買うと言った彼からは、連絡はまだなかった。


あれだけ何度も足を運び、あれだけあの書を気に入っていた、あの彼に、どうしても連絡を取らずにはいられなかった。

彼にすぐに繋がった電話。

彼の決断もまた早かった。

彼はその書を手に入れた。

長い間惹かれたあの書を。



男の来訪が、彼の決断を促した。

けれど、その時決断しなければ、

彼のものにはならなかった、書。

一度は男の指名が入ったけれど。
 
彼のものになるべくしてなった。

彼と繋がるべき、書だったのだ。



「俺はキューピッドだったかな」


男はそう言って無邪気に笑い、そうして別の作品を指名して帰って行った。
男の在廊時間は短かった。
彼は、自分の欲しいものをはっきりと分かっていて、そうして迷わないのだろう。


まっすぐに、自分を信じている男。

決して自分の心に嘘をつかない男。

自分の感覚へ絶対の自信を持つ男。


なかなか味わうことのない、まるでドラマのワンシーンのような出来事だった。


そんな出来事があったとしても、作品は、渡るべきひとのところに行くのだと。

そんなことを思った奇跡の時間だった。


あの書を買ったあの彼も、別の作品を買ったあの男も、双方のこれからの未来は、本当にとてもとても素晴らしいものになるのだろうと、それに心が震えた。


そして、こんな奇跡の瞬間に、誰かの人生が動く決断の時に、立ち会えたことを嬉しく思う。

素晴らしい邂逅だった。

素晴らしい時間だった。

 
きつと彼らとは、また会うだろう。


書が紡ぐご縁と書が開く未来。


そんなことを感じた時間だった。


素晴らしい時間を、ありがとうございます。


書道家 龍玄

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