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心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

神の意志。異なるものとの交錯の果てに。生まれ出でる新たな命。

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たくさん並ぶ書の中で、まっすぐにわたしを呼ぶ書。


正確には書ではない。


けれど、彼にとっては書と同じ。


ただ、湧き上がる想いのままに描くもの。



それが、最も純化した一枚だと感じた。


この書には、意図がない。


ただただ純粋な、表現、がそこにあった。


ただただ、その時、自分の中から、自分を導くものから、あふれ出た、托されたそのものを、そのまま現した、もの。


彼の元に送られてきた一枚の写真。


ただただ、ひたすらに、白い写真。


一枚の白い紙にしか見えないもの。


その写真が写し取ったのはひかり。


写真の上に描くつもりだった構想。


それが一瞬で吹き飛び白紙になる。


その真っ白な状態から湧き上がる。


それこそが純粋な、表現そのもの。


墨を混ぜ瓶から飛び出したビー玉。


ああ、これを使えと云うことかと。


その瞬間に閃くもの。神の、意志。


自らから湧き上がったものなのか、


それとも、何かに導かれたものか。



わからないけれど、なんでもいい。



ただこころのままに、そのままに。



ビー玉をふたつ落とす。ころがす。



螺旋を描くそれはひとつに収束し。



まるでそれは最初から図ったよう。



墨が落ちたその飛沫は、命の誕生。



何もないところから産み出される。



ひかりが満ちるその世界のなかで。



産み出された、ひとつの、いのち。



その飛沫がすべての始まりだった。



命が産まれ、ふたつの命に繋がり、



それらは螺旋を描いて、また次に。



繋がり巡る命の螺旋。その始まり。



命が産み出される、その奇跡、を。



何と言えば表せばいいのだろうか。



それは、もはや神の意志、としか。



そうとしか、呼べないものなのだ。



この作品は、ただひとりでは生み出せなかった。



写真家の坂本氏のひかり。



書道家の龍玄氏のいのり。



それが交錯するその瞬間に新たな命が産まれる。



写真に閉じ込められたひかりの向こうには坂本氏が。



流れ蠢めく墨のゆらめきの向こうには龍玄氏がいる。



命の誕生は、異なるものたちの、交錯の果てにある。



この作品を目にした時の感動を、この作品を感じた時の心の震えを、どうあっても表現しようがない。


あの時目にしたその瞬間から、わたしの頭の中に棲みついてしまった、一枚の書。


あの世界を目指しているのだと、あの世界に浸りたいのだと、心の底からそう思う。



あれが、わたしの世界だ。



静かで、真っ白で、光に溢れ。



本質的なもの以外のすべてが削ぎ落とされ、ただひとつの魂の流れだけがそこにある。



とんでもない書に出会ってしまった。



とんでもない人に出会ってしまった。



最近会ってどうしようもなく心震えたふたりの作品が、こんなにもわたしの心を射抜くものだとは。



わたしは、あの書に会うためにあの場所に行ったのだ。


他の作品のどれもが素晴らしかった。それでも、わたしの心を揺るぎ無く捉えて離さないのはあの書だ。


他の書が霞むほどに、あの書がわたしを呼んでいた。


あの場から離れ時間が経てども心を捉えて離さない。


わたしの中にあの書が息衝いてしまったかのようで。


あの書を見てから、わたしはあの書の世界の中でたゆたっている。



写真がなくても、あの書の姿は色鮮やかにわたしの心の中にある。


あの書を、わたしの元に招き入れたい。あれはわたしの書なのだと、心のどこかが訴える。



今はこの書を買うだけのお金を持ち合わせていない。

けれど、どうしたら買えるだろうかと、そればかり。

ただただそればかりを考えながら、受付をしていた。

これを買えるだけの自分になったら買うのではなく。

これを買うからそれにふさわしい自分になるのだと。

これを買うためお金を生み出す方法を考えるのだと。


それをわたしは知っている。だから、欲しいか否か。


本心から、心の底からこの書を迎え入れたいのかと。


それだけが見えていれば、わかっていればいいのだ。


そう思うなら、答えなど、ひとつしかなかったのだ。




龍玄さん。坂本さん。

素晴らしい作品を、この世に生み出してくれてありがとうございます。

彼らとご縁を繋いでくれた二人に。

いつも素晴らしい人たちとのご縁を繋いでくれてありがとうございます。


そして個展を通して出会ったすべての方に。

奇跡の時間を共有してくれたすべての方に。

龍玄さんが生み出してくれた、書たちにも。


本当に、本当に、心から、ありがとうございます。


「神の意志」にふさわしい、自分であり続けます。


龍玄


坂本貴光