心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

KEISUKE MATSUSHIMA 原宿の杜でニースの風を感じる夜。

人で溢れる竹下通りのすぐそばに。

とても静かな緑で溢れる場所がある。
原宿の杜に寄り添う都会の中の異空間。

KEISUKE MATSUSHIMA.

ドアを開けたその先にあるその部屋は、シンプルに落ち着いたとても美しい空間。

素敵な人たちとともに、ゆっくりと心ゆくまで楽しむワインと料理のマリアージュ


ワインを選ぶはソムリエの久保友則氏。

ニースの風を運ぶはシェフの松嶋啓介氏。


一皿目から、一杯目から、新鮮な驚きとともに始まるディナー。

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ふわりとやわらかな、まるでムースのような一品は、言われなければ素材が何かがわからないほどに、スイーツと言ってもいいほどに、あまくやさしく口の中でほどける。

添えられた冷製のスープもまた、やさしく涼やかな風を思わせる一品。この二品だけでつい先ほどまでの現実と切り離されて、心が軽やかに揺れてこれから始まるニースの旅に心が躍る。

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次の一皿は芸術と呼ぶにふさわしい。
三日月に星の光を散らしたような幻想的な舞台の上に。
まるで夜空の雲をひとふさ拝借したかのような、軽やかな泡。その下には瑞々しく彩り鮮やかな野菜たち。白と赤の縞模様の美しさが一層わたしたちの目を喜ばせる。

とろけるような、とはこのこと。生の魚の味わいもあるのにふわりと溶けるその食感。味付けは控えめに、そのもののを味を愉しんでいると感じられる、そんな一品。

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鮭のムニエル、と見紛うそれは、かぼちゃのソテー。
まるでひょうたんのような不思議なかぼちゃをじっくりゆっくり丁寧に煮込んだそれは、じんわり心に沁みる。決して主張するような味でなく。とてもとても静かな味で。心が落ち着き満たされる、そんな一品。

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驚きとともに運ばれてきたのは透明なフィルムで包まれた丸いパスタ。目の前に置かれてから開かれるそれは、直前まで香りと旨味を閉じ込めて。鋏を入れた瞬間に、その世界が広がる。香り豊かなその味は、あたたかく心と体を満たしていった。

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メインの肉はシンプルに。驚いたのは肉ですらやさしい味だったこと。もっと個性を強く味付け強く、主張してもいいだろうところを、あえてやさしくおだやかに。肉を食べている時に、こんなにゆるやかな気持ちになれると初めて知った。

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最後の一品には驚くべきサプライズ。お皿の上に舞い散るは、輝く白トリュフ。さらにとまるでなんでもないように松嶋シェフの手から舞うそれは、香り高く美しく。それだけでとてもとても幸せな気持ちになる。
一口一口大切に、丁寧に味わうその時間は、幸福以外の何物でもなかった。

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デザートは見るからに涼やかで、秋の風を思わせた。
ふわりと軽く、口の中に入れると共に消えていくそれはとても爽やかで、心地よくすうっと体の中を通り抜けていく。たださわやかな風だけが口の中に残るような、そんな涼やかな風のような一品だった。


お料理が運ばれるたび、ワインが注がれるたび、松嶋シェフと久保さんが、その料理とワインを創り出す世界のことを丁寧に話してくれる。

それもまた、とてもとても豊かな時間だった。


気候によって、歴史によって、文化によって、「美味しい」が違うこと。
スパイスと旨味と。何を大切にするかによって、何に価値を置くかによって、同じ料理を食べても見える世界が変わる。

ひとにとって油はとても大切で、その油を何から取るかでその地の景色が変わること。一面に広がる美しいひまわり畑も、油の貯蔵庫なのだ。

寒い土地だからこそ食物が採れない冬のために、食材の加工が必要で、それがまた素晴らしい食文化を生む。
美味しい、はかつてのひとたちが、今のひとたちが、多くの工夫と試行錯誤を繰り返してきたその結晶だ。


あらゆる国の一皿に、その国で暮らす人たちの知恵と想いが詰まっている。

料理も、ワインも、その地の生活で、歴史で、文化だ。
この一皿に、この一口に、その地に降り積もった時間が息づいているのだ。


「美味しい」の基準は国によって異なるけれど。


美味しいと感じたその瞬間に、言葉も人種も時間も超えて、繋がれるというのは素敵なこと。

その「美味しい」の中にはその地のすべて、それを作った人たちの時間と想いが詰まっていて。それをただその一言で共有できる、受け取れるということが、本当に凄いことだと思うのだ。


松嶋シェフが提供する料理はとてもやさしい。前菜からデザートに至るまですべて。
松嶋シェフ自身は、枠にとらわれない、自然体で自由奔放なひとで、そこがまた素敵なのだけれども、その奥にはいつもやさしいまなざしがあるのだろうな、と感じさせるそんな料理だった。


おそらく、ここに来てゆっくりと料理を食べるだけで、心が落ち着き整うのではないかと思う。都会の喧騒から離れた緑に溢れる静かな場所にあるということもまた、心を落ち着かせてくれる。

久保さんは繊細で凛とした空気をまとった素敵なひとで。
ワインを傾ける時に話してくれるその言葉が、わたしたちをその地に連れて行ってくれた。

ソムリエは、ただワインをセレクトするだけではなくて、その場を創るひと。

美味しいワインならいくらでもある。

けれど、この場に、この料理に、この人に、この瞬間に、どのワインがふさわしいか。そして、そのワインと料理が創り出す世界を豊かに表現し、広げていく。

ワインを一口飲むごとに、その地の空気を、匂いを、光景を楽しむ。その地にの歴史に、ワインの未来に想いを馳せる。

ワインはその銘柄や知名度だけじゃない。そして特別な日にだけ飲むものでもない。いつもの食卓に、普通に寄り添うのがワイン。高くて名の知れたワインを年に一回特別な日だけに飲むではなくて、いつもの日々に、一杯のワインを添える。

家では全く飲まないわたしだけれど、毎日の食卓にワインがあるだけで、それは豊かな日常になる気がするのだ。


とてもとても、素晴らしい時間でした。
今でもあの日のあの時間を思い出すと幸せな余韻に浸れるほどに。

素敵な人たちと素敵な場所で、美味しい料理とお酒を楽しむ。これ以上に幸せなことはない、とその思いを新たにした夜でした。

松嶋さん、久保さん、この日ご一緒していただいたみなさま、本当に心に残る一夜をありがとうございました。

素晴らしいご縁に感謝します。


La Vinee
(久保さんがおられるワインショップです。ここにしかないワインもあります。大切な人への贈り物はぜひここで。)

KEISUKE MATSUSHIMA
(いつかニースの本店に行きたい)

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