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心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

描くこと、表現すること、生きること。

人生は、

いつからでも新しく始められる。

彼は、ずっと焼肉屋ひとすじだった。
絵を描いたことも、習ったこともなかった。
けれど、妻と別れ、弟と別れ、焼肉屋の看板を下ろし。

その、欠落から絵筆を手にする。

ただただ一心不乱に、自分の心のすべてを、ひたすらキャンバスに描き出す。
何時間もかけて初めて描きあげた絵を見て、彼は号泣した。
そこに、自分の新しい未来を見つけたのだ。
この時、彼は60歳だった。

あれから10年。
まったく休むことなく、
朝起きてから夜眠るまで、
彼はひたすら絵を描き続ける。
個展を開催する時間すら惜しい。
その時間があれば描いていたい。

ただただ自分の心を、素直に感じるままに、キャンバスに描き出す。
描くことで、彼の心は透明になる。 
描くことで、彼の心は穏やかになる。
描くことは、彼にとっては生きることそのものなのだ。

知識ではない。
技術ではない。
年数ではない。
どれだけ深く、
どれだけ没頭して、
ひとつに集中できるか。
それが、時間の壁を超える。

時間だけはすべての人間に平等だ。
けれど、
その密度によって実質的には伸縮する。

ただ流れていく時間は、積み重ならない。
本気で向き合った時間だけが積み重なっていく。

彼の絵は一見すると激しく見えるのに、
調和が取れていて、どこか穏やかだ。

ある女性はただただ涙した。
ある学生は突然「天文学者になる」と言った。

彼の絵は「世界のすべて」だ。
あらゆる色と、あらゆる表現。
混沌として、統一性がなく、
自由で、何もかもを許す。

わたしは、彼の絵を世に出したい。

彼の絵が、必要な人に届くように。

彼が、絵を描き続けられるように。


何度も断られてしまったけど、いつか。

その時が、タイミングがやって来たら。

 

この日、気付いたことがある。


わたしは、黒子になりたいのだ。

その人が、本来の姿で輝く場を支えられるような。

わたしは、橋になりたいのだ。

その人を、必要としている人と繋げられるような。



圧倒的な芸術に触れ、本質的な気づきを得た素晴らしい時間だった。

そこには、本当に、感謝しかなかった。


ギャラリーきくらげ

http://www.gallerykikurage.com/works/f:id:kayamy:20160220062948j:plain