心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

知ることは、愛すること。ネイチャーズベストフォトグラフィーアジア展

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ライオンの、トラの瞳がこちらを見る。
敵意、警戒、興味、歓喜…さまざまな感情が、その瞳から伝わってくる。

壮年のライオンの落ち着いた眼差しと、若いトラの無邪気な眼差し。

わたしは、日々を自然の中で過ごしているわけでも、毎日動物たちと触れているわけでもない。

けれど、写真を見るだけで、彼がどんなことを考え、感じているのか、老年なのか若年なのか、男性なのか、女性なのか。
そんなことがなんとなく、わかるようになっていることに驚く。

それはきっと、大自然の中にいるかどうかではなく、いつもの日々を、より丁寧に、よりひとつひとつの出会いを、その瞬間を大切に過ごしてきたからだと思う。

今目の前にいる人に向き合って、その人と深くゆっくりと語らうことも、目の前にあるごはんに向き合って、じっくりしっかり味わいながら食べること。

そんなひとつひとつの、目の前のことに向き合って深くその中に沈んでいく経験のすべてが、より一層目の前のものの本質を見せてくれる力をわたしに与えてくれたのだと思う。

だから、大自然の中で動物に触れたことがない人でも、都会の中で日々を大切に丁寧に、一瞬一瞬を味わいながらゆっくりと生きている人であれば。
きっと、野生のライオンやトラを目の前にしても、彼らがその瞳で何を語ろうとしているのか、彼らがどんな個性を持っているのかを、知識ではなく「なんとなく」わかるのではないだろうか。

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わたしを写真の世界へ導いた安藤さんは言った。

わたしたちは、あまりにも動物たちのことを知らなすぎる。
パソコンの操作にどんなに精通していても、目の前にいる彼が、どんな生活を送っているか、どんなことを考えているかはおろか、男性なのか女性なのかすらわからない。

すぐ隣にいる彼らのことを、わたしたちあまりにも知らない。
それは、北海道に行かなければ会えないタンチョウのことやフクロウのことでだけではなくて、通勤途中に出会う犬や猫も同じ。

いや、わたしたちは、わからないのではなくて、知ろうとすらしていない。

それは通り過ぎる相手に対してだけではなく、自分が心動かされ、美しいと思ったその相手でも同じこと。

美しいと心動かされ、写真の中に収めたいとまで思う相手のことを、わたしたちはなにひとつ知らない。

だれかのポートレートを撮るときに、そのひとのことをまったく知らない状態で撮った写真と、深くそのひとのことを知った状態で撮った写真は、まったく違うものになる。

それは、自然を、動物を対象とした時もきっと同じ。
その対象のことを、深く知るからこそ、その対象の本質を、もっとも美しく輝くその瞬間をより深く理解することができる。
知れば知るほど、より一層対象への愛情も深くなる。

知ることは、愛すること、なのかもしれない。
だって、嫌いな相手のことは知ろうとしない。
好きだからこそ、もっともっと知りたくなる。

そして、知れば知るほど、よりいっそう、愛おしくなるのだ。

けれど、わたしたちは、愛することを、知ろうとすることに、あまりにも無頓着なのかもしれない。

わたしは来月から一週間、北海道の釧路に飛ぶ。
この地に住む動物たちのことを、この地の自然のことを、わたしはなにひとつ知らない。

今度は、知っていこう。少しずつでも、きちんと向き合っていこう。
わたしに感動をもたらしてくれるあの地を、あの地に住む動物たちを、大切にするために。愛するために。

そんなことを、息を呑むほど圧倒的で美しい、奇跡の写真で満たされた写真展で自分に誓う。

ここにある写真は、その地への、その動物への、とめどない愛おしさと畏敬の念でもって捉えられた、奇跡の瞬間。

忘れかけていた大切なことをわたしたちの心に呼び覚ましてくれる、素晴らしい写真ばかり。

一生かけても決してこの写真に収められたすべての瞬間を体験することはできない。

それを、たった数時間で体験できる。
写真は、わたしたちの心を未経験の世界へ連れて行ってくれる。

改めて、写真のもたらす奇跡を思う。

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ここに掲載した写真は、あえて写真の一部を切り取っています。全景は、ぜひ会場で。直接その目で見てください。

ネイチャーズベストフォトグラフィーアジア展
会期:8月27日〜8月31日
時間:10:00〜18:30
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館
(馬車道駅より徒歩約5分)