心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

わたしの愛する世界一。coci la elleの日傘。

わたしが、本当に、心から愛している日傘がある。


初めての出会いは4年前。
新美術館のギャラリーショップに彼女はいた。

水彩絵の具をちりばめた、美しい姿。
ひとつひとつ、布に直接描かれた絵。
柄でさえもひとつひとつ違っていた。

決して、同じものがこの世にない、
世界に一つだけの自分だけの日傘。

雨傘は特殊コーティングが必要なため、
キャンバスをそのまま傘にしたような、
そんな傘は、日傘でしか実現できない。

アーティストの、こだわりと想いがあふれるその日傘を、どうしても自分の日常に添えたかった。

けれど、その時のわたしには、その日傘をすぐに手にするだけの勇気がなかった。

二週間のうちに三度、そのギャラリーショップを訪れた。その間に、その傘を何度開いただろう。

二週間、毎日のように悩んで、毎日のように財布と相談した。

けれど、こんなにも心惹かれる、心震える日傘に出会うことはもう二度とないだろうと。

その時のわたしにしたら、清水の舞台から飛び降りるつもりでその日傘を買ったのだ。

その日傘をさして歩く毎日は、まるで今までとはまったく違って彩り鮮やかなものになった。

変わった日傘、そう言われたこともあったけれど、わたしにとっては世界で一番美しい日傘だった。

わたしの毎日を明るく彩る魔法の日傘。

けれど、わたしは彼女を自分の不注意でしばらく喪うことになる。

忘れもしない、
風がとても強い日。

わたしは自転車に乗って近くのホームセンターに出かけていた。

そのとき、日傘はハンドルにかけていた。
突風が吹き、前輪が傾き、鈍い音がした。
傘の柄が、中程からぽっきりと折れた音。

家に帰って折れた傘をなんとか修復できないかと試行錯誤した。
けれど、竹のような素材のそれは、細かく割れてしまっていて、どうしたって元に戻りようがなかった。

その日から、毎日何度も何度も繰り返し、修復を試みた。

もう使えないのに、どうしてもどうしても捨てることが出来なくて、何ヶ月かに一回持ち出しては修復できないかと試して、けれど修復できずに元の場所に戻す、ということを繰り返した。

転機が訪れたのは1年前。

この傘を作っているお店で、修理もしているということを知った。

わたしはわらをもすがる思いでお店に電話した。

拍子抜けするほどあっさりと、「直りますよ」との言葉。

3年間、捨てられずにただ部屋の片隅にそっと置かれていた傘。
2度の引っ越しの際にも、捨てられなかった。

それが直る。

お店のひとにとっては、たくさんある出来事の中のひとつ、かもしれないけれど、わたしにとっては本当本当に、奇跡の一言だったのだ。



初めて訪れたお店は、とても居心地の良い空間だった。

とても素敵な笑顔のお姉さん。
彩り豊かな素敵な日傘が店いっぱいに並べられていて。

買うわけでもないのに、1時間以上お姉さんと話しながら、ひとつひとつの日傘をうっとりと眺めていた。

色とりどりのキャンバス。
たくさんあるそれらの中から、
自分が一番心惹かれた一本を選ぶ。

ほんとうにたくさんの日傘を見た。
どれも個性的で可愛くて美しかった。

それでもわたしの一番はこの子だと思うのが不思議。
3年経っても変わらない、わたしの世界一だった。

日傘を直しにお店を訪ねたあの日も、日傘を受け取りに訪ねたあの日も、とても晴れた、日傘をさすにふさわしい、暑い日だった。


Coci la elle コシラエル

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