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心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

Zip & Candy 〜西野亮廣独演会2016 8月13日 夜公演〜

 
西野さんは、何かを作り上げる時、まずは音楽から作るのだという。
 
ある世界観を作りたいとき、事細かくすべてを指示すれば、自分が望む場が出来上がるかもしれない。
 
けれど、それではやっているひとにとっては言われた通りにやるだけで、ぜんぜん面白くない。
だからといって自由に任せたら、てんでばらばらのものが出来上がって、統一感も何もなくなってしまう。
 
だから、まずは音楽を作る。
音楽は人の手足を縛らない。
 
けれど、世界観は作ってくれる。
 
クラッシックミュージックを選んだ空間と、ロックミュージックを選んだ空間では、間違いなく全く異なる舞台芸術、小物、フライヤーが出来上がるだろう。
 
おとぎ町も、アイリッシュミュージックを選んだからこそ、木箱が出てきたし、三角旗のガーランドが飾られた。
 
この考え方は、目から鱗どころじゃなかった。
 
ある場を作り上げる時、どうやってコンセプトを共有し、かつ思考の自由度に制限をかけずに創造力を働かせてみんなでアイデアを出し合って、発散しつつもひとつの世界観に収束させるかという、そのことに対する、ひとつの答えがそこにあった。
 
わたしは以前、とにかくとことんコンセプトとメインメッセージを納得するまで掘り下げて、それに沿うかどうかでその場のすべてを決めるという形をとった。
 
けれど、コンセプトもメインメッセージも言葉で、言葉はそれが持つ具体性がゆえに、どうしても思考の方向性を縛ってしまう。
 
けれど、音楽ならそこは自由なんだ、と。
 
絵本の読み聞かせを聞きに来たのに、むしろ音楽に対する捉え方がどんどん変わっていって、音楽の可能性に気づかされた夜だった。
 
そんな夜の、二冊目の読み聞かせ。
 
 
 
これまた絵本のネタバレありなので、ご注意を。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Zip & Candy

 
 
 
 
それは、クリスマスイブの夜の、奇跡の物語。
 
 
最新ロボットのZipには、とっても気になる女の子がいた。
 
旧型のお手伝いロボットのCandy。
 
Candyは、ずっと研究所の中にいる。
彼女は研究所の外の世界を知らない。
 
そんなある日、研究所の博士がしばらく留守にした。
 
ZipはこっそりCandyをつれだして、じまんのつばさを広げ、大空高く飛び立った。
 
Candy、見てごらん。
世界はこんなにすてきなところなんだ。
 
Candyのよろこぶ顔が嬉しくて、
楽しそうな笑顔を見ていたくて、
Zipは毎日Candyを連れ出した。
 
ある時連れて行ったデパートで、Candyがとっても気に入った絵日記帳。それをプレゼントできることも嬉しくて。
 
ねえCandy、クリスマスイブにあのモミの木の下で、待ち合わせをしよう。いっしょに、イブの夜をすごそうよ。
 
Zipの毎日はきらきらと輝いていた。
毎日が、幸せで幸せでたまらなかった。
 
 
けれど。
Candyのようすがだんだんと、おかしくなった。
ぽろぽろとこぼれ落ちていく過去の記憶。
 
「…オテツダイッテ、ナニ?」
 
Zipは、博士に今までのすべてを告白する。
Candyに何が起きているのか。それを知りたかった。
 
Candyのメモリーは、とっくにいっぱいになっていた。
ZipがCandyに新しいことを教えるたびに、Candyの古い記憶は押し出されるように消えていった。
 
ZipはただCandyに笑って欲しかった。
Candyの楽しそうな姿を見たかった。
 
でも、その行為が、Candyから大切なものを、奪ってしまった。
 
灰色の日々の中で、Zipは毎日毎日考えた。
何もできなくてどうしようもなくて苦しくて。
 
Zipはもう一度、博士の元を訪ねる。
 
 
 
 
ひとつだけ、方法がある。
 
Candyのバックアップメモリー
 
けれど。
 
それは。
 
Zipとであうまえのもの。
 
 
 
 
Zipは迷わなかった。
 
 
 
 
そうして、Candyの中からZipは消えた。
 
 
 
 
どれだけのひとが、Zipになれるだろうか。
どれだけのひとが、大好きなひとのために、自分のいちばん大切なものを手放すことを選べるだろうか。
 
Zipにとって、なによりも大切だったCandyとの時間。
Zipにとって、なによりも幸せだったCandyの思い出。
 
それが、Candyの中から消える。
そして、もう二度と、その時間は得られない。
 
それでも、いちばん大切で大好きなCandyのために、いちばん大切なその時間を手放す。
Candyとふたりだったからこそ意味があった幸せな時間。それより大切なもののために。
 
誰かのことを好きだなあって思ったら、その人にも自分のことを好きだなあって思ってほしい。
それがあたりまえの気持ちで、ほしいって思ってしまうのがにんげんってもので。
 
でも、だいすきなそのひとがしあわせでなければ、
そのひとがだいすきなじぶんもしあわせじゃない。
 
だから。
 
なにもそのひとからもらえなくても、
ただただそのひとがたいせつで。
 
そのひとにただしあわせになってほしくて。
 
そのために、きめて、うごくんだ。
 
 
 
 
クリスマスイブの夜。
 
Zipはたったひとりでモミの木の下にいた。
 
Zipの耳に聴こえるキャタピラーの音。
 
Candyの、足音。
 
けっして、ここには来れないはずのCandyがそこにいた。
 
Candyの絵日記帳。
あの日の約束のことが書かれた、記憶のかけら。
 
 
 
ねえ、Zip。
 
わたしは明日の朝には今日のことを忘れてる。
 
でも。
 
この絵日記帳を開けば、
 
いつだって、大好きなZipに会えるのよ。
 
 
 
オルゴールワールドも、何度読んでも泣いてしまうのだけど、Zip & Candyも、Zipの想いの深さと覚悟を想うとほんとに涙が止まらない。
(ここでCandyに感情移入できないところがわたしがわたしたる所以である)
 
それだけの想いと覚悟を持って、誰かと向き合えるだろうか、とそんなことを考えてしまう。
たとえなにひとつ報われなくても、それでもそのひとために覚悟を決めて行動できるか、と。
 
そのひとが幸せでなければ自分も幸せじゃないのだけれど、たとえそうだとしても。
そこまで腹をくくることはできるかなあと。でも、腹をくくれる自分でありたいとそう思う。
 
わたしにとっての「Zip & Candy」は、そんな覚悟を問われる絵本なのだ。
 

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西野亮廣独演会(なんと完売御礼!)
 
Zip & Candy

 

ジップ&キャンディ―ロボットたちのクリスマス

ジップ&キャンディ―ロボットたちのクリスマス

 

 

 
 
なお、わたしは絵本を持っていないので詳細違っていたらお許しください\(^o^)/