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心の景色の旅に出る。

こころふるえるだれかとの時間、そのものの中にあるだれかの想い、だれかの、じぶんのこころを旅したその軌跡を綴っています。

A COMMON BEAT〜争いの後、違いを認め、人は歩み寄れるか〜

なにもない、本当にゼロからのスタート。
100日間、仕事の合間に練習を重ね、そうしてついに訪れた本番。

 

その千秋楽が14日の夜公演だった。

 

公演が終わり、キャストの全員が観客を迎える。
あふれるほどの人の波の中で、彼を見つけた。

 

彼は、とてもいい顔をしていた。
本当に、やりきった、という、満面の笑みを浮かべてそこに立っていた。

 

わたしの知る彼は、どこか少し控えめなところがあって。
けれど、彼がこの日演じたのは、情熱の大陸の住民。
深紅の衣装に身を包み、情熱的に舞い踊る彼の姿が舞台の上にあった。

 

ミュージカルに出るって、こんなに大勢の人の前で踊るって、本当に本当にすごく勇気のいること。
それを、彼はやる、と決めて、100日間やりきった。

 

きっと、たくさんの葛藤と不安を乗り越えて、彼は今ここに立っているんだなと思うと、そんな風に決意して、勇気を出してここに立っている人は彼だけではないんだなと思うと、始まったその瞬間に涙があふれた。

 

ひとりひとりが、その人にとっての、勇気を振り絞って、後から後から湧いてくる不安と、何度もくじけそうになるその気持ちと、100日間戦い続けてその上で、ここに立っているんだ、とそう思うと。

 

それだけで、奇跡のような気がした。

 

この舞台に立った人たちは、まったくの素人。本業は別にあって、でもこのミュージカルを、ゼロから創り上げたいと、決意して行動した人たち。

 

歌も、ダンスも、プロには及ぶべくもない。
けれど、100日間、わからないなりにがむしゃらに、頑張ってきたというその熱量が、舞台にあふれていた。

 

もちろん、プロの方がもっともっと必死に頑張っているのも、だからこそプロなのだということもわかっているけれど、でも、初めてやる今だからこその、熱量というものがあると思う。

 

それは例えば甲子園のような。

 

観客席を埋め尽くしたひとたちは、きっとキャストの家族だったり友人だったり過去のキャストだったりするのだろう。
あたたかく見守る空気に包まれた会場で、観客のひとりひとりにとって、大切な人たちが創り上げる舞台。

 

それは、プロの舞台では得られない空間なんじゃないだろうか。
観客はもはやただの観客じゃなくて、キャストのこの日にいたるまでの様を見てきた、一種のパートナーみたいなもので。

 

舞台に立つ人、観客席に座る人、きっと、だれひとりとして、「他人事」の場所に立っていない。

 

だからこそ、この舞台は唯一無二の空間なんだ。


※以下、ネタバレ含みます。

 

 

 



ミュージカル「A COMMON BEAT」




色鮮やかな個性を持つ、赤、青、緑、黄の四大陸。
色とりどりの、自分達だけの輝きを謳歌していた人々の楽しく平和な日々は、ある日突然終焉を迎える。

 

彼らは、自分たち以外の大陸の存在を知る。
文化も、思考も、習慣も何もかも違う大陸。

 

初めは物珍しがっていた彼らは、

いつしか、

自分たちにとって大切なものを守るために戦争を選択する。

 

大切なものが奪われないように、大切なものが喪われないように。

そうして、戦争は戦争を呼び、喪失は喪失を呼び、嘆きと憎しみは繰り返される。

 

「大切なもの」があるからこそ、守りたいと戦う。

けれど、戦いは相手も自分も傷つけ、それが連鎖していく。

大切なものがあまねく喪われてしまった殺伐とした荒野を見て、

そうして、守りたいと戦ったからこそ、守れなかったのだと、気付く。

 

すべてを喪いながら、荒野の果てまで来て、そうして振り返って、その手には何もないことに気付く。

 

大切な我が子も、父も、母も、友人も。喪われたのだと、気付く。

同じように痛みを感じ、嘆く姿に、敵対した相手の、

大切なこどもも、父も、母も、友人も。奪ってしまったのだと、気付く。

 

同じ鼓動がそこにある。

 

同じように、大切なものを喪った時に嘆くその姿に。

それは自分ではないだろうかと思う。

 

同じように、大切な存在が産まれて感動するその姿に。

それは自分ではないだろうかと思う。

 

心震えるその瞬間は、文化も思考も習慣も関係なく、

わたしたちは同じ鼓動を刻んでいるのではないかと。

 

同じ鼓動を刻む、その瞬間があるのだと、そう気付くところから全てが始まる。

同じ鼓動を刻む、わたしたちは、そこから理解し合うことができる可能性がある。

違うものは違うもの。でも同じものもある。それは同じ大陸の人たちだってそう。

 

だから、たとえ文化も思考も習慣も違っても、理解するために時間はかかるかもしれないけれど。でも、最初の光を広げていくことはできる。

 

昨日朗読してもらった、オルゴールワールドを思いだす。
あの絵本でも、断絶していたひとびとを繋いだのはオルゴールの音色だった。

そして、この日観た「A COMMON BEAT」はミュージカルだった。

 

音楽は、誰もがそのまま受け取れるもの。

理解という障壁を超える必要はそこにない。

使い古された言葉だけれど、音楽は確かに世界の共通言語であるのだろう。

 

鼓動のその音すら、音楽と言えるのかもしれない。

 

13日にオルゴールワールドの朗読を聴き。

14日に「A COMMON BEAT」の舞台を観る。

 

そして、今日、15日は、終戦記念日だ。

不思議な符号を感じる自分がいたりした。


わたしたちは分かり合えるはず。
このミュージカルでも繰り返し出てきた言葉。

 

わたしも、そう思う。
と、同時に、分かり合えなくてもいいとも思う。

 

無限に時間があれば、すべての人と分かり合うために時間を費やしてもいいけれど、わたしたちには無限に時間はない。それどころか、ほんの僅かの、有限な時間しか与えられていない。

 

時間も、能力も、お金も、人には全て限界があって。
だからこそ、何を大切にするかを選ぶ。
その大切なものに、限られた時間を注ぐ。
大切なものがひとりひとり違っているからこそ、それぞれに、かける時間もまた異なる。

それが、ひとりひとりの個性が輝くということでもあると思うから。

 

だから、分かり合えない人がいていい。
時間は有限だから、誰と分かり合いたいか、を選べばいい。

 

ひとりの人と、100年かけて分かり合うのもいい。
分かり合える、100人の人と共に過ごすのもいい。

 

どちらが良い悪いではなくて、どちらを選択するかという、それだけのこと。

 

ただ、恐れたり、否定したりしなければそれでいい。

ただ、そうか、と言って違う道を歩めばいい。

 

劇中歌の「Rebirth」。

わたしはこの歌が本当に大好きで。

 

「A COMMON BEAT」よりも先に、わたしはこの歌を先に知った。

作詞作曲をしたシンガーソングライターのちゃるさんのライブで、

初めて聴いた時、その歌は圧倒的な存在感でわたしに迫ってきた。

 

あれからも何度かちゃるさんのライブには足を運んでいるけれど、

それでも、何度聴いてもこの歌の持つその力には魅了されるのだ。

 

何度聴いても心震えるのは、わたしにとって大切なことを歌っているから。

 

戦争ではなくても、普通に暮らしていても、大切なものを喪うことも、

何もかもを失くしてしまった、わたしの手には何も残っていない、と。

そう思うこともあるだろう。

 

絶望の果てで、

嘆きの果てで。

後悔の果てで。

 

でも、それでもやはり人は生きていたいと思っている。

どんなに辛くても、死んだ方がましだと感じていても。

 

死んだ方がましだ、とは、それほどまでに辛いけれど、

それでも生きていたいという叫びなのだと知っている。

 

例え、どんな時でも、どんな状況でも、どんな状態でも、

何もないと思っても、そう考える自分の体はここにある。

 

その自分の体は、心は、父母がいてくれたからこそ、ここにある。

父母は、その祖父母がいてくれたからこそ、生まれてそして出会った。

そして、祖父母を、父母を、自分を生かしたのは間違いなく、この社会で。

この社会で繋がるすべての人で、今ここにある、この社会を作り上げたすべての人。

 

何もない自分が、ここにいるということがすべてを内包している。

例えどうしようもない戦争と略奪と暴虐の末に残されたのだとしても。

残された自分が喪われた人たちよりも、どうしようもなく未熟で無能だとしても。

 

でも、今ここに生きているのは自分で。

喪われたものは戻らない。

だから、どんなに辛くても、どんなに挫けそうでも、

今、ここから始めるのだ。

 

地面を見るか、青空を見上げるか。

それだけの違いしかない、いつだって。

 

いつだって、わたしたちには今あるものしかなくて。

過去にも戻れず、未来にも飛ぶことはできないから。

いつだって、今ここから始めるのだ。空を見上げて。

 

そして、喪われた日々の意味づけをどうするかは。

 

今生きている自分に託されている。

 

過去の愚かな出来事だと封印するか、繰り返すのか。

あの出来事があったから今がある、と希望にするのか。

 

すべては、今ここからの選択次第なのだ。

 

「Rebirth 〜未来へつなぐ鼓動」

 

失って気付いたのは
胸の奥の一つの希望
僕らに 息づいている
鼓動が 聞こえるだろう

残された この命は
自分だけの ものじゃない

始めようか この場所から
歩き出そう 今ここから
失くしたもの 想いながら
僕ら ひとつの 空を見上げよう

争いは いつの日も
何もかも 奪うもの
私にも あなたにも
傷跡を 残していく

この悲しみ この痛みを
繰り返したくはない

始めようか この場所から
歩き出そう 今ここから
失くしたもの 想いながら
僕ら ひとつの 空を見上げよう

やがて世界は生まれ変わり
長い夜にも 朝が来る
受け継がれてきた 僕らの鼓動
きっと未来に つながっているから

思い出して おもいだして
刻んでいく この鼓動

 

 

A COMMON BEAT

来年度のキャストを募集中。次は、あなた。

http://commonbeat.org

うたう旅人 ちゃる

http://charulog.exblog.jp

オルゴールワールド

https://www.amazon.co.jp/オルゴールワールド-にしの-あきひろ/dp/4344022750



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